研究概要 |
高速液体クロマトグラフ(HPLC)と誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP/MS)または同発光分析装置(ICP/AES)とを直結したシステムを構成し,その基本的性能を検討するとともに,重金属ストレス下で培養したラン藻体内における重金属含有タンパク誘導の観測に応用した。 (1)基本性能検討のため,鉄を含む4種のタンパク,すなわちフェリチン,ヘモグロビン,ミオグロビン及びチトクロムCの混合物を計測したところ,検出限界(タンパクの質量,36)として0.01〜1μgの値が得られた。また,ミオグロビン及びチトクロムCそれぞれ1分子中に含まれるFe原子の個数をクロマトグラムのピ-ク面積から計算すると0.97±0.05,1.010・1となり,本システムは定量性についても優れていることが確認された。分離カラムを選択することにより,さらに高分解能・高感度な計測システムが構成できると期待される。 (2)ラン藻Anacystis nidulansを重金属(Cd,Sn,Hg,Pb)ストレス下で培養し,組織を分解したのち本HPLCーICP/MSシステムで分析したところ,CdとHgの場合に,分子量的1万のフィトキレチン様タンパクの誘導が確認された。これらのタンパクは,遊離の金属イオンとは明確に分離して計測できた。さらに誘導タンパクの熱安定性を検討したところ,熱処理後の回収率はCdーフィトキレチンで90%,Hgーフィトキレチンで10%の程度であり,Hgーフィトキレチンが熱変性を受けやすいのは,Znを含む天然のフィトキレチンに比して金属の配位形態が異なるためと推測された。ラン藻体内における重金属含有タンパク誘導の経時特性解明に向けた予備的検討も開始した。
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