研究概要 |
1.含浸液膜における分離係数の定式化と希少金属の分離への適用 含浸液膜による2成分系金属イオンの分離における操作因子と分離係数の関係,特に物質移動の影響を解析した.原料液相の物質移動抵抗は分離係数を低下させるが,液膜相の物質移動抵抗の影響は,金属イオンと担体との錯形成反応の担体に関する反応次数の大小関係により異なることを明らかにした.酸性有機リン系抽出試薬を担体とする含浸液膜によるInとZnの分離実験,およびZnとNiの分離実験を行った.実験結果は上述の解析により良好に説明され,原料相物質移動抵抗の軽減より分離係数が大幅に向上した.これらの結果より,優先的に透過する成分の透過流束をほとんど低減させずに分離係数を向上させるための操作指針を得た. 2.液膜溶液の溶媒洗浄を伴う流動液膜による希少金属の分離 TRー83を担体とする流動液膜(流路が,原料相|液膜相|逆抽出相のように構成されている液膜で,|は疎水性多孔質膜(含浸液膜)を表す)によるInとZnの分離において,Znを逆抽出(洗浄)するために希薄な塩酸水溶液を流動液膜相に混入することにより,Inの選択性が大幅に増加した. 3.水溶性錯化剤を共存させた膜抽出法による希土類元素の相互分離のシミュレ-ション 抽出部,洗浄部を備えた膜抽出器により,水相に錯化剤を添加してYとErを分離する操作について,水相での錯成反応,油水界面での反応,水相および膜相の拡散などを考慮した設計方程式を提出した.これに基づいてシミュレ-ションを行い,分離係数,回収率,(油相/水相)流量比,膜抵抗,錯化剤濃度,pHなどが所要膜面積に及ぼす影響夜シミュレ-トし,本操作の最適化に関する知見を得た.
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