本年度研究実施計画の第一番目に上げた温度可変(30〜300℃)溶液膨潤特性測定装置の製作は、予想以上の時間を要したが、12月中旬に完成し、標準物質(合成高分子)及び石炭を用いた予備実験の結果は良好であり、一部の結果に付いて成果報告会にて発表を行なった。本測定装置は、他分子が石炭組織中へ拡散して行く際の活性化エネルギ-を精度良く測定可能な世界で唯一の装置であると確信しており、今後、本研究の目的の一つである溶液膨潤ゲル生成のメカニズム解明はもとりよ、石炭化学における最も重要な問題とされている石炭の高次構造を調べる上で強力な武器になるものと考えられる。また、本研究での鍵を握ると考えられる石炭ゲルの化学的挙動についても、モデル反応として水添タ-ルピッチを用いる石炭の一次液化反応を選び、THFとの2液系を用いて調製した石炭ーピッチゲルを、オ-トク-ブを用いる事なく、しかも、攪拌する事なしに、370℃で加熱することにより90%以上(ピリジン可溶分、イリノイ炭)の高い液化収率を得る事が出来た。この実験結果は、明らかに石炭ゲルの使用により反応効率の向上が起こっている事を示しており、反応試薬を石炭組織中に出来るだけ均一に分散させる実験的手法として2液系膨潤法が極めて有効であることを意味している。即ち、来年度は、具体的に各種の触媒を用いる石炭の変換プロセスにたいして、この石炭ゲルの概念がどのくらい機能し得るか詳細に検討を行なっていきたいと考えている。研究実施計画に記載した膨潤過程における超音波エネルギ-照射効果については、目下実験デ-タの整理を行なっており近日中に発表出来る予定である。また、高圧力下での溶液膨潤測定装置の製作については、今年度の上記新装置製作過程において種々のノウハウを得たので来年度には実現出来るものと確信している。
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