研究概要 |
本年度に得られた研究成果を箇条書きすると以下の通りである。 1.半導体中の局在電子状態に関する理論的研究の成果としては,半導体中の不純物原子の格子間での位置に対する検討を行い,対称性の高い原子配位での局在電子状態のヤ-ン・テラ-効果を計算する際の条件を明らかにした。これらの条件として,不純物原子に局在している電子の数,格子振動として取り入れる母体原子の変位の範囲および上記効果を引き起こすモ-ドと不純物原子の変位座標の関係が重要であった。 2.半導体結晶における格子欠陥に対する微小領域電子状態評価として,新しく電子ビ-ム励起発光およびリフレグタンス測定法を考案し,その評価システムの組立を行った。このシステムは半導体中の格子欠陥などの微小領域での原子構造および電子状態の評価を行うもので,IIーVI族およびIIIーV族化合物半導体の格子欠陥に適用した。上記の分光スペクトルの測定をするための種々の条件および電子顕微鏡として併用した時の試料配置などの実験上の諸条件を明らかにした。 3.GaAs基板上に成長させたCdTeエピタキシャル薄膜に対してフォトルミネッセンスおよび反射スペクトルの測定を低温で行い,これら結晶において観測される1.59eVの鋭い発光線の起源を明らかにした。この発光はCd空孔とTe位置の最近接ドナ-不純物との複合欠陥に束縛された励起子からの発光と同定された。また,上記発光線の水素熱処理効果を調べ,束縛励起子の消滅過程の知見も得ることができた。 4.良質なZnSおよびZnSe結晶を成長させるために行った実験成果として,Sb系溶媒から成長させた結晶に対してフォトルミネッセンスおよび共鳴ラマン散乱効果の測定を行い,3.794eVのSbが関与した発光線がZnを置換したSbドナ-によることを明らかにするとともにラマン散乱線の強度が温度依存性を示すことを明らかにした。
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