研究概要 |
これまで炭素と等電子構造をもつ化合物に関して、様々な元素の組み合わせを試み、超高圧合成による新しい物質探索を行なってきた。その結果、閃亜鉛鉱類似型のB_2O,B_2Sを始め、カルコパイライト型構造を含む、ZnSiP_2やZnGeP_2の化合物が新たに合成できることを明らかにした。また、層状構造のBSーBSeなどを合成した。本研究では、新たにZn_3N_2とSi_3N_4の組み合わせによるZnSiN_2の合成できる可能性を検討した。 Zn_3N_2とSi_3N_4粉末とを1:1の割合に秤量、十分混合した後でhBNカプセルへ充填し、ベルト型装置による高圧高温実験に供した。合成条件は、6.5GPa,1800℃、3hrまでとし、急冷操作により試料を得た。 粉末x線回折の結果より、例えば6GPa,1500℃,1hrの条件で得られた灰色粉末試料と、歪みウルツ型構造のMnSiN_2との回折図形を比較すると、これらが同形であることを示した。化学組成分析などより、得られた試料は新規化合物ZnSiN_2であり、斜方晶系、a=5.2609A,b=6.3095A,c=5.0328Aの格子定数をもつことがわかった。大気中でのTGーDTA測定の結果は、880℃付近から測定終点の1350℃までに数段階の連続的な発熱変化を伴う、重量増(約5%)であることを示した。この緩慢な重量増は酸化によるものであり、部分的にはZnSiO_3の形成されることを示した。拡散反射スペクトルの測定結果から、ZnSiN_2は約3.64eVの吸収端をもつことが明らかになった。更に室温でのESRの測定から、g〓1.97に鋭いシグナルが観測された。 4GPa,1450℃以上の条件で、ZnSiN_2はほぼ単一相となるが、正確な合成圧力ー温度条件の決定を行なう必要がある。また、構造の精密化を図るためにリ-トフェルト解析などが今後の課題である。同時に、化学組成の定比性と原子配列の規則性などの相関を検討する必要のあることが明らかになった。
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