研究概要 |
固体表面及び界面における強誘電性液晶の配向機構を分子論的に解明する一つの手段として、フ-リエ変換赤外分光法による強誘電性液晶の表面誘起配向の解析評価を行った。本研究では実用的観点から、室温でカイラルスメクチック(SmG)相を示す多成分系強誘電性液晶Gsー1014の分子配向に及ぼす表面形状及び表面の化学構造の影響について検討した。 1.ラビング処理した二枚のKBr結晶板に厚さ数ミクロンのCSー1014を挟んでラビング方向に平行及び垂直な偏光による赤外吸収スペクトルを測定した。SmC相における振動バンドの帰属及び二色比から液晶を構成する各分子の長軸が平均的に,ラビング方向に対して平行に配向することが示された。しかし、その配向度はネマチック液晶の場合と比較して劣っていた。 2.CSー1014の薄膜(5nm)における分子配向の基板温度依存性を調べるために、表面増大電磁場分光法による赤外吸収測定を行った。この結果、重量膜厚約6nmの島状Ag蒸着膜上に展開した等方的液体の自然冷却過程で得られたCh,SmA,及びSmC相においては著しい配向が見られた。特にSmA、SmC相では分子長軸が微視的Ag表面に対して平行に配向していることが明かになった。 3.二種類の化学構造の異なるポリイミド膜表面に夫寺した液晶薄膜(50nm)の高感度反射スペクトル測定により、液晶分子の配向がポリイミド膜表面に存在する極性の大きなカルボニル基やアミド基の配向によって著しく影響されることが分かった。 現在、ポリイミド膜で被覆したITO伝導ガラスを用いて電界誘起配向の測定をATR法により行っている。今後は、ポリイミド膜の表面ラビング処理による表面及び内部の膜構造の変化を明らかにし、液晶分子の配向に及ぼすこれからの影響について考察したい。
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