研究概要 |
硫酸化多糖がエイズウイルスの増殖をin uitroで抑制することが分かり、われわれはカ-ドラン硫酸を合成した。本研究ではカ-ドランのオリゴマ-やでん粉のオリゴマ-部分がウイルスに接着するであろうこと、またウイルス外殻を形成するリピドニ分子膜にはアルキル鎖が侵入できるであろうことに着目し、硫酸化アルキルオリゴ糖を合成した。オリゴ糖の還元末端に種々の触媒で長鎖アルキル基をつけた。触媒としてルイス酸やヘテロポリ酸を用いると、前者は1,3ーβ結合したラミナリペンタオ-ス,後者は1,4α結合したマルトペンタオ-スから主鎖切断することなく,アルキル化オリゴ糖を与えた。硫酸化剤としてピペリジン硫酸を用いて作った硫酸化アルキルオリゴ糖につき,in uitroで抗エイズウイルス活性を測定した。アルキル鎖のつかない硫酸化ラミナリペンタオ-スのEC_<50>(=50%のエイズウイルス増殖抑制作用を示す濃度)は235μg/mlであったのに対し、デシル基(C_<10>H_<21>)およびヘキサデジル基(C_<16>H_<33>)のついたアルキルラミナリペンタオ-スの硫酸化物は、それぞれEC_<50>=67および17と高い抗エイズウイルス活性を示した。次に、糖鎖の長さおよびアルキル鎖長の生理活性に及ぼす影響を調べた。糖鎖長7の硫酸化オクタデシルβーマルトヘプタオシドは、糖鎖長3の硫酸化オクタデシルβーマルトトリオシドより2.4倍高い活性を示した。そこで,平均重合度約10のラミナリオリゴグルコ-スを使って作った硫酸化ドデシルラミナリオリゴグルコ-スについて抗エイズウイルス活性を調べたところ,EC_<50>=0.074μg/mlと非常に高い(カ-ドラン硫酸はEC_<50>=0.62μg/ml)活性を持つことが分った。硫酸化度は高くないと高活性は得られなかった。
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