研究概要 |
高熱伝導物質である窒化アルミニウム(AlN)に,他元素が固溶すると構造が変化し熱伝導率が大きく低下する。本研究は,AlーSiーOーN系,あるいはAlーOーN系の相反応とそれにともなう熱伝導率の変化を明らかにすることによって,熱伝導率に傾斜をもたせた新機能材料を創出することを目的としている。 本年度は,AlNーSiO_2ーY_2O_3を基本組成とした。所定の調合組成粉をベレット状に成形し,1750゚〜1900℃で焼成して焼結体を作製した。予備実験として,AlNーY_2O_3系の焼結を行ったところ,Y_2O_3の最適添加量が3〜5Wt%において密度および熱伝導率ともに最大となることが判明したので,当面Y_2O_3の添加量を3Wt%に固定することにした。 基本組成における焼結実験の結果,SiO_2の添加はおよそ20Wt%付近までは緻密化を阻害し,添加量がそれ以上になると再び緻密化が回復する傾向が見受けられた。X線回折の結果によると,SiO_2の添加量の増加に伴い,AlNのピ-クが消失し,新たに27R,15RなどのAlN擬ポリタイプ化合物の生成が認められた。 熱伝導率については,SiO_2無添加試料では170W/mKであるのに対し,SiO_2を添加すると急激な熱伝導率の低下が生じ,5Wt%添加でも約20W/mKに激減した。さらに,30Wt%添加では,5W/mK以下に低下することが認められた。この結果は,AlNをベ-スとして適当な組成の組合せにより,熱伝導率に異方性を与える材料の創出が可能性であることを示唆している。 今後は,AlーSiーOーN系にAlーOーN系を加え,さらに詳細な実験を行い,相反応による生成物,特に窒化アルミニウム擬ポリタイプの種類と熱物性との関係を解明する。
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