研究概要 |
ガラス中に埋め込まれた半導体超微粒子を対象とし,光励起された電子・正孔,励起子の光学非線形性について研究を行っている。本年度は主に発光測定により微粒子の粒径に依存したキャリヤの動的挙動について考察を行った。 半導体としてIIーVI族のCdSe,IーVII族のCuClを用い,これをガラス中に分散し,熱処理条件を大きく変えることで種々の粒径の微粒子を得た。本年度は特に大きな粒径の試料作製に重点を置いた。CdSeでは,これまで得られなかった励起子吸収の存在する大きなサイズの微粒子作製に成功した。これによって一種類の半導体で閉じ込めの状況が大きく変えられることになり,光学特性の粒径依存性が統一的に議論できる。 超微粒子ではキャリヤの量子閉じ込め効果のために吸収端は短波長側へシフトするので,発光スペクトルとその超高速ダイナミクスを調べるための紫外ピコ秒パルス光源が必要である。本研究では,CWモ-ド同期YAGレ-ザ-で同期励起した色素レ-ザ-(パルス幅2ps)を用い,高効率の非線形光学結晶(BBO)を用いて和周波混合を行うことで,370〜395nmのピコ秒パルスを得た。これを用いてCuCl微粒子の励起子発光寿命を測定し,粒径と振動子強度との関係を考察した。測定に高速の光電子増倍管と単一光子計数法を用いたので100ps以下の寿命まで観測された。測定結果より発光寿命は粒径のー2.1乗に比例することが分かり,これは理論的予測のー3乗に近く,励起子の再結合確率が粒径に伴って増加する“励起子超放射現象"の実験的な検証である。 現在,CuCl微粒子について非線形感受率X^<(3)>測定を始めており,励起子の共鳴効果によるX^<(3)>増大が認められている。今後は更にフェムト秒パルスを用いた過渡吸収分光等を行い,超微粒子に特有な量子準位と光学非線形性,超高速緩などとの関係について考察する予定である。
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