研究概要 |
物質の表面には固体の内部の性質と異なった新しい電子状態が表面の原子配列に対応して局在しいてる.この電子状態を制御して,それに新しい機能性を持たせることが期待されている.固体の表面に分子線蒸着によって表面構造の制御をするとき,表面に到来した原子,分子が表面原子との間で生じる電子的な相互作用を知るため簡単化したシステムで実験的に研究することを目的としている. 1.開発中の電子励起イオン脱離法(TOFーESD)による水素の検知器をさらに改良して,表面の現象を動的に観察できるようにした.従来、半導体表面は比較的不活性で10^<ー9>Torr台の真空中でも長時間清浄面を保つと云われてきたが,本装置による時間変化の観察では表面に吸着する水素や水及び微量の炭化水素からプロトンを検知することで1x10^<ー10>Torrでも20〜30分の間に汚染が進行していることが判明した.このことは機能性材料の発展の鍵になる.また清浄なシリコン表面に水素は簡単に吸着し,吸着量によって,モノハイドライドからダイハイドライドさらにトリハイドライドへと進行しシリコンの表面を腐食していくと考えられていたが,Si(111)面には吸着しにくく,Si(100)面では吸着しやすく,また,微傾斜面では大きな吸着特性の違いがあることが判明した.現象の詳細は現在解析中である.また,水素吸着後は,従来から云われていたように,Si(100)2x1の超格子は欠落し,Si(111)7x7はデルタ7x7に変化していることがRHEED観察で確認された.2.今後の計画として,半導体表面では水素による終端化がその上への酸化膜や金属膜の成長に影響することが知られてきた.ここで開発した水素の検知機能を持つTOFーESDは水素の高感度検知と定量が可能なので予め既定量の水素で終端化しておき,シリコン表面上へのシリコンまたはゲルマニウムの成長様式を研究する.
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