研究概要 |
本研究では導電性の期待される積層構造、光機能材料に適した光化学特性の期待される高歪構造を持つポルフィリンの開発を目的としている。本年度では過塩素酸コバルト(III)ポルフィリンと種々のポルフィリンフリ-ベ-ス(オクタエチルポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、そのNーメチル誘導体、(N,N')ービニレンビスポルフィリン等)とを高純度アセチレンガスの共存下で反応させることにより(N,Co)ービニレン結合が生成し、2層、3層、4層の積層構造を持つポルフィリンオリゴマ-が容易に合成できる事を見いだした。一般に、ポルフィリンのN,N'ージアルキル化反応では隣接したピロ-ル環の窒素がアルキル化されるが、本反応においても同様の位置選択性が見られた。この(N,Co)ービニレン結合は過塩素酸鉄(III)で酸化することにより,(N,N')ービニレン結合に変換する事ができた。これらのNー置換ポルフィリンオリゴマ-を適当な酸でプロトン化すると電荷を制御しながら種々のカチオン性誘導体を容易に得ることができる。次に、これらのポルフィリンのうち有機金属錯体について塩化メチレン中で酸化還元電位を測定した。その結果、最初の一電子酸化はコバルトポルフィリン部から起こるが、Nー置換ポルフィリン部がこの酸化還元電位に及ぼす影響としては、ポルフィリン周辺部の置換基の効果は殆どなく、窒素上の第二の置換基としてのNーメチル基やNHプロトンの効果が大きいことがわかった。一方、積層構造を有するポルフィリンとしてN(21),N(22)ーエテノ架橋ポルフィリンを取り上げ、800nm付近に吸収帯を持つフロリン誘導体に変換する反応についても検討を加えた。その結果、エテノ架橋部の置換基がポルフィリン環に及ぼす立体障害がこの型のポルフィリン環の反応を大きく左右する事を見いだした。
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