研究概要 |
遷移金属合金の磁性と凝集的性質に関して以下の研究を行った。遷移金属元素は,多くの金属非金属元素と合金をつくる.これらの合金は様々な機械的,電気的,磁気的性質を示し実用的な見地から数多くの研究がなされてきたが,それぞれに特有な性質の微視的発現機構は物性物理学にとっても興味深い対象である.実際,多くの規則合金が第一原理に基づいたバンド計算によって調べられており,精度良く基底状態の物性を予測することが可能になってきている.他方,多くの合金が不規則相で形成される.特に,鉄,ニッケルを母体に遷移金属を固溶させた合金は様々な磁性を示し,実用的にも重要である.このような置換型不規則合金の電子状態を第一原理に基づいたKKRーCPAの計算の計算によって議論した。 具体的にはFeーX(X=Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu),NiーX(X=Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu)およびCoーX(X=Cr,Mn,Fe)について計算した。格子定数は全エネルギ-が極小になる条件から決めている.磁気モ-メント,格子定数については,NiーFe,NiーMn等の単純なCPAでは記述できない場合を除いて実験結果を良く再現する.一方,合金の生成熱については,ポテンシャル差の小さい場合(FeーCr,FeーMn,FeーCo,NiーMn,NiーFe,NiーCo等)を除いて実験との一致は良くない.特にNiーTiやNiーVでは符号さえ合わない.実験結果を良く再現している不純物極限での結算結果との比較から,少くとも不純物極限では,シングルサイトの取扱いでは不十分である事が明らかになった. 今後の計画として,対称性の低い系や規則合金からのずれとしての不規則性の取扱いを考えている.また電気伝導度,磁気光効果など応用面で重要な物性を取扱う,合金の生成熱に関しては,シングルサイトをこえた取扱いの理論的な枠組みを導出する必要がある.
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