研究概要 |
混晶系(Cu/Li)アニオンラジカル塩(MeBrーDCNQI)_2Cu_<1ーX>Li_Xを合成し,X線結晶構造解析により格子を占める銅原子の割合が結晶作成時に添加したLi/Cu比に対しどのように変化するかを調べXを決定した。次にKBr法でフ-リェ変換赤外スペクトルを測定し,V_<C=N>(イミン)の吸収ピ-クがXとともに連続的に変化する事を見い出した。V_<C=N>とDCNQIの電荷Pの間には直線関係がありこの事から銅は+1.3価の混合原子価状態にある事を確認した。銅の混合原子価性についてはドイツのグル-プとの間で論争のあった処であるが本実験と藤森らによるXPSの結果によって結着したものとみなされる。また本混晶系はX〜0.3で絶縁相が消え低温まで金属状態が安定となる事を見い出した。これらの研究を基に,鋼表面上に成長するDCNQIーCu錯体の電荷状態を調べる目的で,ベ-クライトに35μ厚の銅箔を積層した銅張積層板をMeBrーDCNQIのアセトニトリル溶液に浸潤し,銅基板上に黒色銅錯体を成長させた。生成した薄膜をフ-リエ変換赤外分光光度計,高感度反射測定装置を用いて吟味した。V_<C=N>(イミン)に相当するピ-クが1487cm^<ー1>に観測された事から先に調べた混晶系(Cu/Li)アニオンラジカル塩での結論を参照すると銅は+1価であり(MeBrーDCNQI)_2Cuがきわめて速やかに(〜1s)銅板上に生成している事が結論される。真空蒸着装置を用い金属アルミニウムを(MeBrーDCNQI)_2Cuの棒状単結晶上に蒸着させる事を試みたところ約300A^^°の均一な薄膜が形成される事が判った。将来この系の電気伝導性を調べる予定である。この外(DMeーDCNQI)_2Cuに約10gの加重を単結晶の針状方向から加えると金属状態が不安定化する現象を見い出した。この事はDCNQIーCu系の特異的電子状態と関連して興味深いものと考えられる。
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