研究概要 |
従来の研究では,マウスの腹腔内にハイブリッド人工膵臓を移植してきた。ハイブリッド人工膵臓の臨床応用では,腹腔内は良い移植場所ではない。移植場所として,a.移植が容易な部位,b.万が一の場合容易にハイブリッド人工膵臓が除去できる場所,c.血糖値変化に鋭敏に応答できる部位,などが要求される。本研究では,ハイブリッド人工膵臓の移植場所として種々の部位を検討すると共に,移植できる新生毛細血管床を新たに作ろうと試みている。本年度は,おもに評価系モデルの作製を試み,またハイブリッド人工膵臓を移植する新毛細血管床の新生に関しても予備的検討を進めた。移植場所の検討のためにはイヌを用いる必要がある。イヌ膵臓からのラ島単離法の開発を進めた。コラゲナ-ゼ溶液の膵管注入法を新たに試み,膵組織1g当り698±156個のラ島が単離できた。単離ラ島は,インスリン分泌さらに血糖値コントロ-ル能を有していることが明らかになった。今後イヌを用いた移値場所の検討を行う評価系が確立できたと考える。マイクロカプセル化ハムスタ-ラ島を糖尿病マウスの腹腔内に移植し移植当日より15ーデオキシスパ-ガリンを投与した5匹のマウス全例で,長期生着し血糖値は正常域に保持された。ハムスタ-からのラ島単離は簡単であり,余り労力を要せず極めて再現性よくラ島の生着を行うことが出来るシステムを開発できたため,ハイブリッド人工膵臓と一体となって新膵臓となる毛細血管網の構築の研究を容易に行うことが出来るようになった。毛細血管床を形成する方法として,上皮細胞増殖因子分泌するマウスの顎下腺細胞をマイクロカプセル化後,マウスの腹腔内に移植した。マイクロカプセル周囲には,多くの新生血管が見られた。移植場所の検討を行う評価系の確立,新な移植場所の創設法として新毛細血管床誘導法の試みを行うなど,着実に研究が進展し,近い将来のハイブリッド人工膵臓の臨床応用も夢ではないと考える。
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