研究概要 |
北米ミシガン州の野性マウスから単離されたHー2W7ハプロタイプはC4/Slp関連遺伝子を5つ有し、通常は性ホルモン依存的なSlp抗原を構成的に発現している。その機構を分子生物学的なレベルで明らかにする目的で、W7の5つのC4/Slp遺伝子の塩基配列の解析を行ない.1は異型的なC4,1つは典型的なSlp,残りの3つは5'側がC4,3'側がSlpから由来するハイブリッド遺伝子であることを明らかにした。従って,これらハイブリッド遺伝子はC4ーSlp遺伝子間の不等交叉による組み換えによって生じ、C4のプロモ-タ-がSlpの構造遺伝子と結びついた為に,みかけ上のSlp抗原の構成的発現に列ったCとが示唆された。しかしながら組み換え点付近では、3つのハイブリッド遺伝子共にC4の配列とSlpの配列が交互にモザイク状に認められる複雑なパタ-ンを示し、又そのパタ-ンが3つのハイブリッド遺伝子間で異なっており、これら,遺伝子はくり返し生じた組み換えによって形成されたと思われた。又、実際にどの遺伝子が転写されているかを調べる目的で、5つの遺伝子間で塩基置換の認められる部位について近年開発されたPCRーSSCP法を用いたW7マウス肝mRNAの解析を行なった。その結果、雌雄共に最も多く存在するのはC4のmRNAで、2つのハイブリッド遺伝子はその数分の一のレベルで、もう一つのハイブリッド遺伝はC4の1/20位のレベルで発現しており、真のSlpのmRNAはまったく検出されなかった。以上の結果により、W7に於けるSlpの構成的発現は、不等々叉によりC4のプロモ-タ-がSlpの構造遺伝子に結合した為であることが確認された。
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