魚類のMHCの遺伝子は、哺乳類のMHC遺伝子をプロ-ブとしたクロスハイブリダイゼ-ションによってはつかまえることができなかった。しかし、ヒト、マウス、ニワトリのMHC遺伝子を比較すると、システインの近傍だけが強く保存されていることが分る。そこで2カ所のシステイン領域に対するプライマ-を作製し、メダカのゲノムDNAを鋳型としてPCR法を行い、これらのプライマ-に挟まれた遺伝子を増幅させた。その結果、哺乳類のMHCクラスII遺伝子と50〜60%の相同性を示す、約190bpのメダカの遺伝子断片が3種類得られた。これら3種の遺伝子断片同士の相同性も50〜60%であった。この3者の関係が同じ遺伝子座に存在する別の対立遺伝子であるのか、あるいは別の遺伝子座に乗っている遺伝子であるのかは現在のところ不明である。次に、近交系メダカHB32CとHO4CとのF1からmRNAを精製し、λgt10をベクタ-としてcDNAライブラリ-を作製した。このcDNAライブラリ-をメダカのMHCクラスII様遺伝子断片をプロ-ブとしてスクリ-ニングしたが、陽性シグナルを得ることはできなかった。そこで近交系メダカHO4CのmRNAからcDNAを合成したのちPCR法を行ったところ(リバ-スPCR法)、ゲノム遺伝子の場合と同様190bpの遺伝子断片の増幅がみられた。したがって、メダカのMHCクラスII様遺伝子配列をもつ遺伝子が発現している可能性が高いものと考えられる。リバ-スPCR法によって増幅された190bp遺伝子断片をプロ-ブとしてcDNAライブラリ-をスクリ-ニングしたところ、81個の陽性シグナルが得られた。現在、この陽性シグナルのセカンドスクリ-ニングならびに、リバ-スPCR法によって増幅された遺伝子断片のクロ-ニングおよびシ-クエンスを行っている。
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