研究概要 |
今年度は、まず前回収集したデ-タの解析を完了させた。このデ-タは1,2回と違って検出器として位置感応型を使用した初めてのものであり、エンドポイントエネルギ-から下100eV迄の、いわゆる質量感度領域の真の統計は150Kイベントに達した。解析にあたってその位置検出器の検出効率の位置依存性を補正する必要があったので、そのためのデ-タである ^<109>Cd線源のKLLオ-ジェスペクトル, ^3Hに非等価ポテンシャルを印加せずに測定したβスペクトル等の解析結果を参考にして、最終的には、検出効率の位置依存性のパラメ-タもX^2検定の自由パラメ-タの一部とした。その結果解析の自由パラメ-タである規格化定数,エンドポイントエネルギ-,形状因子,バックグラウンド,ニュ-トリノ質量,検出効率の補正パラメ-タの8個に対してX^2検定を行い、Mv^2=ー65±85(eV)^2を得た。この統計誤差(±85)の他に、使用した応答関数の評価誤差と、今回初めて終状態スペクトルの計算誤差も考慮した系統的誤差として±65(eV)^2も含めて、最終的にニュ-トリノ質量の上限値として13eVを得た。この値はソ連の最近の結果17〜40eVとまったく一致せず、チュ-リッヒの<18eV,ロスアラモスの<26eVのどの値よりも低い結果である。これをソ連,チェコでの国際会議で発表すると共に、Physics Letters誌に投稿し受理された。 半導体検出器の開発については、今その性能テストを実行中である。今のところ検出器本体は目途がついたので、前置増幅器をより低雑音化し、信号対雑音比のよい検出器を完成させ、近いうちに高位置分解能半導体検出器を利用したニュ-トリノ質量測定実験を行う予定である。
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