宇宙の大域的構造形成や銀河形成問題に重大に関連する宇宙背景放射の非等方性の解析を行い、数値解析によって得られた銀河形成モデルでの非等方性の予測値を観測結果と比較することにより、銀河形成モデルに制限を与えた。 具体的には先ず、様々な銀河形成モデル(バリオン優勢な宇宙モデル、コ-ルドダ-クマタ-やホットダ-クマタ-を含む宇宙モデル)で期待される小さい角度スケ-ルでの宇宙背景放射の非等方性を様々な初期条件や宇宙論的パラメ-タ-の値のもとで解析した。特に宇宙項がある場合の様々なモデルにおいて期待される非等方性の解析を系統的に行い、どの場合も宇宙項がある場合にモデルへの制限が緩くなることを示した。 次に開いた宇宙モデルでの宇宙背景放射の大きな角度スケ-ルでの現在の非等方性を求める公式を導出するのに成功した。その公式を使って、様々な銀河形成モデルで期待される非等方性の四重極成分を数値的に求めた。そして、最近の宇宙背景放射探査衛星(COBE)によって得られた四重極成分の上限値とモデルでの予測値を比較することによりモデルに制限を与えた。その結果、あるモデルで制限される密度パラメ-タ-の値などは小さい角度スケ-ルで得られた制限値とほぼ同様な値であるが、小さい角度スケ-ルでの非等方性と違い、四重極成分は宇宙初期での水素再結合以降起こるかもしれない局所的な効果(例えば、水素再イオン化による放射の散乱や重力レンズ効果など)によっては影響されず、宇宙初期でのゆらぎの大きさをそのまま反映するので、その意味で四重極成分によるモデルへの制限はより強い制限を与えることとなった。
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