研究概要 |
非晶質国体中のラジカルイオンの定性と定量の方法を確立する作業の一環として本研究では共鳴ラマン分光法を主とした方法論の開発を行った。具体的にはラジカルイオンを選択的には生成する方法として研究代表者が確立したガンマ-線照射低温マトリックス分離法を応用していくつかのラジカルイオンを生成し,その共鳴ラマン分光スペクトルを測定した。とくに共鳴ラマンスペクトルと電子吸収スペクトルがいくつかの共通の分子パラメ-タで記述されることに着目して両スペクトルを同時的に測定しパラメ-タ-フイッティング法によって最適の分子パラメ-タ-を求めることを試みた。その結果,たとえばジクロロベンゼンのラジカルカチオンについてその共鳴電子状態における励起寿命,基準励動変化,マトリックスの環境の差などに関するパラメ-タ-を決めることができた。 プラズマ科学的立場からの研究としてはケイ素を含む二,三の有機化合物のラジカルカチオンのESRによる研究も行った。具体的な成果としてはフェニルシランのラジカルカチオンを生成したところ極めて容易に光分解してフェニルラジカルとシリルカチオンに解離することが分った。この結果は基板上の特定位置に微細加工的にアモルファスシリコンを堆積させたい場合に利用できる可能性をもっている。すなわち,電磁レンズ系を用いてフェニルンランカチオン或はシリルカチオンを目標の位置近くに誘導し,フェニルンランカチオンは光分解してシリルカチオンにした上で適当な方法でカチオンの正電荷を中和すれば微視的スケ-ルでアモルファスシリコンを堆積することが考えられる。ジメトキシメチルシリコンについてもそのラジカルカチオンのESRを測定したが,このカチオンは最終的には基板上でシリコン酸化物を微視的に堆積させるための原料物質となる可能性を示唆した。
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