研究概要 |
ダブルプロ-ブ法を用いてプラズマ重合系の見かけの電子温度をリアルタイムで測定した。測定に際しては内部にシ-スヒ-タを有する2本のニッケルパイプ(外径1mm,長さ10mm)をプロ-ブとして用い,シ-スヒ-タの加熱によりプロ-ブ表面への絶縁性重合膜の堆積を防止した。また、白金パイプ(外径2mm,長さ20mm)をプロ-ブとし,ヒ-タごとパイレックスガラスに封入した密封型プロ-ブセンサ-を新たに開発した。プラズマガスとしてはアルゴン,ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)およびヘキサフロロベンゼン(HFB)を用いた。電子温度はプラズマ状態を直接反映するものであるが,HMDSプラズマ中の電子温度の経時変化から,反応性プラズマの定常状態に達するまでに要する時間は約20分であることがわかった。放電出力と電子温度の関係から,重合性プラズマにおいては放電出力に対して電子温度の極小点が観察されることがわかった。走査電子顕微鏡によるHFBの重合膜表面の観察から,極小点付近の条件下で作製されたプラズマ重合膜は表面が非常に滑らかであったが,その点から低出力および高出力側に大きくずれた条件下で得られた膜の表面はかなり粗いものであった。また,FTーIRによる表面分析の結果は極小点付近で得られた重合膜にはかなりモノマ-の構造が残っていることを示した。そして,その極小点付近で得られた重合膜は他の条件下で得られた膜に比べかなり高い酸素の選択透過性を示した。これらの実験結果は電子温度がプラズマ状態のモニタ-に有効であり,重合性プラズマに見られる電子温度の極小点は重合物の堆積と脱離のバランスのとれた状態であり,重合膜構造を制御するためのキ-ポイントになり得ることを示唆するものである。
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