研究概要 |
本年度は、高ネルギ-研究所パルス中性子源KENSのINC及びLAM分光器,また日本原子力研究所にある東北大分光器TUNS及びTOPAN分光器を用いて、主に以下の研究を行なった。 1.高濃度近藤物質における結晶場及び磁気揺動の研究 (イ)YbX(X=N,P,As) この系は,昨年度から研究を続けているが,本年度は特に,より高い精度での励起レべルの決定に努力し,信頼できるデ-タを得た.さらに,準弾性散乱の測定も行い,そのスペクトル形状が,室温と低温(数十K>>T_N)で大きく違うことを見いだした.これは,この系における,fーf間接相互作用とcーf相互作用の大きさについて新たな情報を与えるものである. (ロ)RTSn(R=Ce,Yb;T=Ni,Pd) 比較的近藤異常の小さい反強磁性体CepdSnについては,非整合磁気秩序をもつことを見いだした.また,CePdSnの結晶場励起スペクトルがイオン的で明瞭なものであるのに対して,半導体的な非磁性の近藤物質CeNiSnのそれは弱く不明瞭であり,この物質においては,むしろ準弾性散乱にスペクトルのウエイトが高いことを見いだした.このことは,両者の4f電子状態に大きな差があることを示している.CeNiSnと電子一ホ-ル対称なYbNiSnについても磁気非弾性散乱の測定を行ったが,大きな線巾をもつ非弾性散乱の重なりが見いだされ,この物質においても,イオン的な4f電子状態からのずれが大きいことが明らかになった. (ハ)Ce(Zn_<1ーx> Cu_x)_2 イジング型のメタ磁性を示すCeZn_2については,比較的明瞭な結晶場励起が観測されたが,重い電子系CeCu_2に近い物性を示すCe(Zn_<0.75>Cu_<0.25>)_2の場合は,結晶場スペクトルは不明瞭であり,またピ-ク位置もCeZn_2と違う.このことは,CeZn_2とCe(Zn_<0.75> Cu_<0.25>)_2においては,物性の変化に対応し,4f電子状態に大きな差があることを示している. 2.中性子散乱実験条件の整備 パルス中性子源KENSのINC及びLAM分光器において,約4Kまでの低温で容易に実験が行えるように,実験装置を整備した.本研究で購入した連続流式液体ヘリウムクライオスタットは,この目的のために用いた.
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