研究概要 |
ウラン・ニッケル・錫化合物中で1:1:1の組成比を持つUNiSnは、反強磁性秩序と共に半導体(常磁性)ー金属(反強磁性)転移を示すことから多くの興味を集めている。結晶構造はMgAgAs型で、ウランと錫がNaCl型構造をなし、この構造中最も大きな隙間の位置(1/4,1/4,1/4)にニッケルが入り込んだ構造である。この様な結晶構造の特殊性が、この系の電子構造にそのまま反映している。バンド計算によると、参照系ThNiSnの電子構造の基本はNaCl型希土類もしくはアクチナイド・モノプニクタイトと同様のものである。価電子帯はSnー5p軌道とNiー3d軌道との混成により結合・反結合バンドよりなり、これらの中心にNiー3dの非結合バンドが位置し、Thから4個の電子が流れ込みすべて占有される。伝導帯の底にいるThー6dバンドがNiー3dとの混成により押し上げられギャップが生じ、系は半導体になる。UNiSnの場合は、バンド計算によるとUの5fバンドがフェルミ準位近傍に位置し金属となり実験結果に反することから、UはThと同様+4価で存在し且つ5f状態は局在している。この様なモデルでこの系の磁性と伝導の異常が説明される。 最近やはりウラン三元系U_3Ni_3Sb_4が半導体となることから、ギャップ生成の起源が興味を集めている。結晶構造の特徴は、UとSbがウラン系で良く知られたTh_3P_4型構造をなし、やはりこの構造中最も大きな隙間の位置にNiが入り込んだ構造である。UNiSnの場合と同様Sbー5p軌道よりなる価電子帯の中央にNiー3dバンドが位置し、伝導帯の底にいるUー6dバンドがやはりNiー3dとの混成により押し上げられギャップが生じる。同じ機構が同じ結晶構造を持つ希土類化合物Ce_3Au_3Sb_4等でも生じていることがバンド計算の結果より明らかになった。
|