研究概要 |
好中球は食作用時や種々の刺激に応じて,細胞膜リン脂質からアラキドン酸を遊離しロイコトリエンB_4を産生し炎症部位に好中球を集める。ロイコトリエンB_4はヒト好中球によりω水酸化される。この反応は好中球ミクロソ-ムに特異的なチトクロムP_<450>(ロイコトリエンB_4ωーヒドロキシラ-ゼ)によるものである。水酸化誘導体はさらに酸化されてカルボキシ誘導体となり白血球走化活性等の主要な生理活性を失う。この反応は細胞質のアルコ-ルデヒドロゲナ-ゼおよびミクロソ-ムのアルデヒドデヒドロゲナ-ゼによることをすでに示してきた。 今年度は,20ーヒドロオキシロイコトリエンB_4はまた,ロイコトリエンB_4ωーヒドロキシラ-ゼ(チトクロムP_<450>)によって20ーオキソロイコトリエンB_4を経て20ーカルボキシロイコトリエンB_4となることを明らかにした。すなわち,水酸化および2段階の脱水素の3段階からなる反応がチトクロムP_<450>系によって融媒される。このことは,これらの反応の一酸化炭素による阻害が450nmの光により回復することや,エイコサペンタエン酸に由来するロイコトリエンB_5によるヒドロキシ誘導体の脱水素反応の競合阻害などにより示された。反応系にNAD^+を加えるとNADPH依存性の20ーOHロイコトリエンB_4の酸化が促進した。これは,ミクロソ-ムに存在するNAD^+依存性アルデヒドデヒドロゲナ-ゼによって,20ーオキソロイコトリエンB_4が除かれ反応が進みやすくなったと考えられた。NAD^+依存性の反応の方がNADPH依存の反応より数倍高いことをも考え合わせると,ミクロソ-ムのNAD^+依存性アルデヒドデヒドロゲナ-ゼは20ーOHロイコトリエンB_4から20ーカルボキシロイコトリエンB_4への酸化反応において重要な役割を果していると考えられた。
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