研究概要 |
1.ウサギ腎皮質の脂肪酸ω水酸化酵素,Pー450_<kd>のcDNAクロ-ニングによってその一次構造を決定した。本Pー450はクロフィブレ-ト等のペルオキシゾ-ム増強剤によって誘導されるが,更に免疫抑制剤のサイクロスポリンによってもPー450_<kd>蛋白ならびにmRNA量が顕著に誘導されることを見いだした。2.ウサギ腎皮質より得た3種の脂肪酸等のω水酸化酵素,Pー450_<kaー1>,Pー450_<kd>の全構造を明らかにした結果,互いに85%以上の高いhomologyを有することが示されたが,Pー450_<kaー1>とPー450_<kd>は異なった基質異性を示す。既ちPー450_<kaー1>は脂肪酸とPGAに,Pー450_<kd>は脂肪酸のみに働く。そこで両者のキメラ体を構築して発現させ,活性を測定して基質特異性を特定する部位を検索したところ,Sphl(143残基)サイトよりN末側に両活性認識部位の局在が示唆された。3.ブタの腎皮質からも4種のPー450を分離精製した。その中の2種は分子量が53,000と52,500で脂肪酸のω水酸化を特異的に触媒し,それらのN末端アミノ酸配列はウサギの腎皮質ω水酸化酵素と68%の相同性を示した。他の2種のPー450はヒトのデブリソキン水酸化酵素と類似のN末端アミノ酸配列を示した。4.ラットの肝ミクロゾ-ムにおけるロイコトリエンB_4(LTB_4)のω水酸化活性はプロスタグランジンA_1(PGA_1)によって競争阻害をうけるのでLTB_4とPGA_1のω水酸化反応は同一のPー450で触媒されることが示唆された。一方,ヒトの肝ミクロゾ-ムによってもラウリン酸,PGA_1及びLTB_4はいずれも活発にω水酸化をうけるが,前二者の反応はウサギ肺のプロスタグランジンω水酸化酵素(Pー450_<Pー2>)の抗体により顕著に阻害されるにも拘らず,LTB_4のω水酸化は殆ど阻害をうけない。そこでヒトの肝にはLTB_4に特異的なω水酸化酵素の存在が示唆された。
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