研究概要 |
ビタミンAの本質的な作用は細胞活殖と細胞分化を転写レベルで制御していることろにある.ビタミンAの代謝物であるビタミンA酸がその活性本体であり、核内に存在するerbA関連の遺伝子でコ-ドされているレセプタ-を介して生命機能にとって不可欠の遺伝子の発現を制御している.ビタミンA酸に代謝されるレチノイドにまた発ガンプロモ-タ-の作用を効果的に抑制することが知られている.その他多くの点でビタミンA酸は発ガンプロモ-タ-と逆の作用を示す.従って,ビタミンA酸の作用機構の解明には発ガンプロモ-タ-の作用機構の解析が必須と考え,本年度は発ガンプロモ-タ-の受容体の検索を進めた。 用いた材料はHL60細胞.細胞を細胞質と核とに分画後,可溶性タンパクを液体クロマトに分離し,各分画をトリチウムTPAと培養しその結合量を検定した。その結果,予期される大量のプロティンカイネ-スCが存在したが,その他に,TPAの存在下に細胞質から核へと移行する分子量5〜6万と推定される物質の存在をみとめた.本物質はTPAと10^<ー10>Mで結合するほか,テレオシジン,デブロムアプリシアトキシンとも強く結合する、さらにタプシガルギンとも結合する. このタンパクは細胞質中でHSP90と結合して存在する.この性質はグルマコルチコマイドレセプタ-と似ているが,このタンパンはデキサメタドン,レチノイドとは結合しなかった。また,ジクロルベンゾジオキシンも結合しない.本物質の精製を続けているが,新規の核内移行性レセプタ-と考えている. この結果は,発ガンプロモ-タ-の作用機構として信じされていた、PKCの役割に見直しを迫るものである。そしてレチノイドと発がんプロモ-タ-との関係を明らかにし,一義的な解釈を可能にすると考えている。
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