研究概要 |
網膜視蓋投射は二次元的にきっちりとした対応を示す.本年度は視蓋の吻尾軸の決定が発生のどの時期におこるかをニワトリ・ウズラキメラで追究した.孵卵3日目にウズラ視蓋原基の吻側半をニワトリ胚視蓋原基の尾側半に,尾側半を吻側半に移植し,孵卵14日目にDiIの小さな結晶を対側の網膜におき,16日目に固定して、投射パタ-ンを調べた。 20体節期より前に移植したものでは、投射パタ-ンはホストによって調節を受けていた.すなわち網膜耳側からの線維はキメラ視蓋の吻側に(もともとは尾側だった),鼻側からの線維はキメラ視蓋の尾側に投射していた。25体節期に移植した視蓋では網膜鼻側からの線維は,キメラ視蓋の尾側(もともとは吻側だった)で迷走し,密な枝を送ることはなかった。別のキメラ視蓋では,線維がほとんど退行している例も見られた。このことから視蓋の吻尾軸の決定は25体節期ごろにおこることがわかった。 視蓋原基ではホメオボックスを持った遺転子engrailedが尾ー吻方向へ匂配を持って発現されている.前述のようにしてキメラ視蓋を作製し,engrciled発現パタ-ンを調べると,投射パタ-ンが決定される時期に,engrciledの発現パタ-ンも決定されることがわかった.以上のことより視蓋の吻尾軸の決定にengrciled遺伝子が向上していることが示唆された。本研究タイトルに示す網膜線維投射のための位置特異的分子発現のためには視蓋で,いくつかの発生学的出来事があり,その結果きっちりした投射が完成すると思われるが,その初期にengrciled遺伝子の関与が示唆された.engrciledはショ-ジョ-バエで形態形成に関与している遺伝子として注目をあびているものであり,形態形成を決める遺伝子は種をこえて保存されているという重大な発見であると思われる.
|