研究概要 |
線維芽細胞株BALB3T3/A31の培養上清よりマスト細胞の増殖をcKit依存性に促進する活性物質を分離精製した。分子量3万〜4万の蛋白質で活性型cKitを発現しているマスト細胞に対しては、用量反応性にその増殖を促進するがcKit受容体を発現していないものや不活性型cKitをもつマスト細胞に対しては,増殖促進作用はみられなかった。線維芽細胞におけるこの増殖促進因子の産生は対数増殖期にはほとんど見られず、コンフルエント状態になってから始まる。様々な物質による産生の変化を調べたところ,Naーbutyrateによってその産生が促進される事が明らかとなった。この増殖促進因子は、野生型マウス由来の線維芽細胞の表面には発現しているが,Sl/Sl^d変異マウス由来のそれには発現がみられず,大部分の線維芽細胞株では細胞表面に結合した型で存在し培養上清には遊離してこない。 マウス精細胞の分化におけるSl遺伝子の関与を調べるため,Sl^d/+マウスの人工停留精巣一回復手術を行い,未分化A型精原細胞から再開する精細胞分化を調べたところSl^d/+変異はA型精原細胞からの分化のみならずその維持にも重大な影響を及ぼすことが明らかとなった。 この様にSl遺伝子が精細胞の維持、分化に重要な役割をはたしている事が分ったが、精巣中のどの細胞がその因子を産生しているかは不明である。そこで精巣構成細胞を分離培養し、増殖促進因子産生細胞を調べたところ,少なくともSer to li細胞がこのSl遺伝子の作り出す増殖促進因子を産生している事が明らかとなった。
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