研究課題/領域番号 |
02225202
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
吉田 尚弘 富山大学, 理学部, 助手 (60174942)
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研究期間 (年度) |
1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1990年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | 骨化石 / 酸素同位体比 / 環境水 / 鯨 / 鹿 / 象 |
研究概要 |
1.骨試料がごく微量になると、有意に酸素同位体比の測定値が低下する。昨年度測定できなかった微量人骨試料について、今年度導入したロ-タリ-・エバポレ-タ-により、溶液を濃縮して測定する方法を検討した。これにより、骨試料として最低40mgで測定が可能となった。 2.鯨の同一個体の骨と血液の酸素同位体比を測定した。その結果、骨と体内水の間の酸素同位体分別係数として、1.0191(±0.0002)という値が得られた。哺乳動物体内での、体液と骨の体温(37℃)における酸素同位体分別係数(哺乳動物一般に適応する基礎的数値)が世界に先駆けて、はじめて求められた。 3.東釧路貝塚(6000〜7000yrB.P.)、真脇遺跡(3000〜4000yrB.P.)から得られた鯨骨化石の酸素同位体比は現在に向けて、上昇傾向を示している。このことは、温暖な縄文海進時に上限であった海水準が現在に向けて低下しているという定説を支持するとともに、その変動の見積もりに定量性を与えている。 4.現生のアフリカ象に対して、野尻湖から発掘された34500〜48800yrB.P.( ^<14>C年代)のナウマン象化石の酸素同位体比は著しく低い値を示し、当時の気温は2〜10℃低かったと推定された。同様に鹿化石(38000〜42000yrB.P、 ^<14>C年代)の酸素同位体比から、当時の気温は5〜11℃低かったと推定された。 5.鯨、象、鹿などの獣骨化石から、ある時期の環境水の酸素同位体比が限られた範囲内に推定されたので、気候変動の不確定要素が排除された。古人骨化石の酸素同位体比から、その集団の移住・拡散を追跡するための基礎が確立された。
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