研究概要 |
主として欧米(一部ソ連)において,これまでに公刊されたシベリアおよびアラスカに関する文献目録を計43点収集した。これらを閲覧した上で民族誌に関連すると考えられるものをコピ-資料として作製し,さらに,それらのデ-タベ-ス入力の準備作業として,各論文ごとにカ-ド化することにし,約8000枚を作製ずみである。ただし,これらのカ-ドについては,重複,欠落している論文がある可能性があり,厳密な論文カ-ドの枚数を確定するには到っていない。 文献カ-ドの作製と並行させて,シベリアおよびアラスカに関する民族誌から明らかにし得る寒地適応の生業戦略を抽出し,比較検討した。その結果、現段階で推定できることは以下の通りである。 すなわち,衣食住にわたって,基本的に重要な資源獲得としてトナカイのもつ意味がもっとも大きいということである。このことについては考古学上の研究成果との対比が必要であり,部分的ながら,遺跡等の発堀例を参照してみると,かなり整合性のあることがわかった。 1.衣について.遺跡におけるトナカイの角,骨の発堀例の多さからみて,その皮革,毛皮の利用がひろく行なわれたと推定づき,民族誌の事例につき,その原型と発堀のプロセスを採り得るであろう。 2、食について,考古学上は状況証拠以上に出るものは乏しく,民族誌によって狩猟民の食生活を考察することが重要であるが,トナカイをはじめとするシカ類,魚類,海獣類が中心である。 3、住について、前2者に比して遺物として古いものを知る手がかりがあり,考古学と民族誌の成果の比較が容易である.生業とのかかわりから,移動式住居と定居式住居の区別について,時代,地域の問題が興味あるテ-マがある。
|