研究概要 |
1.南北両アメリカの更新世末前後における哺乳類相の変遷と,先史モンゴロイドの拡散や自然環境等に関する文献情報を収集した。北アメリカに関する文献は多く,かつシンボジウム等のまとめとしてロ-カルな機関から出版されたものも多く,入手に時間を要した。そのためオリジナルな個々の一次デ-タよりは、総活的な文献の整理を優先した。 2.更新世後期に絶滅した大型哺乳類の種類数及びそのパタ-ンは,旧世界と新世界ではっきり異なり,また新世界ではその時期が人類の出現とほぼ一致している。その説明として,人類による過剰殺戮(オ-バ-キル)説と気候変動(環境変化)説の,大別して二つの説がある。 3.オ-バ-キル説のうち,特に南北両アメリカに対しては,P.マ-ティンを中心に提唱された電撃戦モデルがある。これは教値シミュレ-ションによるモデルであり、必ずしも具体的な証拠のみから構成されている説ではないが,それを裏付ける,あるいは補強する種々の証拠があり,かなりの支持を得ている。 4.気候変動説は少くとも二つに大別される。ひとつはR.グラハムを中心とする考え方で,気候変動による環境変動による環境変化から生態系が大きく変化し,それが大絶滅の主因とする派。もう一方はR.ガスリ-を中心とする考え方で,絶滅したとされる種類の多くは,分布範囲の退縮や命名規約上の問題などとして真の絶滅とは見ず,更新世末の動向の減少を他の時代境界における通常の動物相の変化と大差ないと見る派である。 5.気候変動説の一般的な弱点として,絶滅に要した時間の短かさと,熱帯・亜熱帯地域でも起った絶滅の原因,が残る。また,上述のガスリ-らによる更新世末の絶滅は他の時代境界での絶滅と大差ないと見る見方は,筆者の専門とする小型哺乳類の比較などから,誤りと言わないまでも,大いに疑問である。
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