研究概要 |
本研究では、酸化物超伝導体の線材化法として、酸化物を半溶融状態あるいは融点直下の加工しやすい高温状態で押出し加工を行い,押出し条件の制御により緻密で配向組織を有した酸化物超伝導線材を作製し,J_Cを改善することを目的としている。 本年度は,Bi系酸化物およびTl系酸化物をAgシ-スに充填し,大気中融点直下で押出し加工を行い,その後,圧延によりテ-プ化し,熱処理を行うことにより超伝導テ-プ材を作製した。Bi系では、押出し材の組識はC面が押出し方向に平行に配向した組織を示し,また,テ-プ仕後は,C面がテ-プ表面に平行に配向した組織を示した。77Kでのテ-プ材のJ_Cは,押出し比が増加する伴い増大し,押出し比いで5900Alcm^2の値が得られた。これは,押出し比の増加に伴い,組織の緻密化と配向化が進行したためと考えられる。また,テ-プ化の過程で中間圧延と熱処理を加えることにJ_Cは向上し,9100A/cm^2が得られた。今後は、押出し条件を検討することにより,さらにJ_Cの向上を目指す予定である。 Tl系では,押出し材の組織は2212相,2223相および超伝導性を示さない未同定相からなり,配向化は見られないが,緻密化が観察された。押出し時の温度が高いほど超伝導相の体積率は増加するが,1133K以上では、液相が介在するためポ-ラスな組織で,未同定相の割合も増加した。テ-プ化後,熱処理した試料では,1123Kで熱処理した場合に最も良好な超伝導性が得られており,その超伝導の開始温度および電抵抗温度はそれぞれ120Kおよび98Kであり,また77KでのJ_Cは2600A/cm^2であった。この系では、組織の最適化を図ることにより,さらに超伝導性が向上するものと考えられる。
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