研究概要 |
我々はMBE法を用いて、高温超伝導体薄膜のその場成長をめざして研究を行なっている。当面の物質としては準安定な多くの相を有するBi_2Sr_2Ca_<nー1>Cu_nO_yを選びこれ等の相を選択的に得、またバルクでは得られないnの大きな相の形成とその物理的性質の解明を目指している。さらに極薄膜の形成、nの異なる相の超格子の形成等を目指しているが、現在までは如何に良いBi_2Sr_2Ca_<nー1>Cu_nO_yの超伝導薄膜をその場成長で得るかという事に主力が注がれ、n=1〜5相に関しては単相でその場成長で超伝導を示す薄膜が得られた。 方法は基本的には分子エピタキシ-(MBE)である。酸化源としては高純度オゾンを用いた。自由エネルギ-値の互に近いnの異なる相を作り分けるのは、共蒸着法では困難であることを既に以前の実験で結論していた。従って、この目的のため蒸着源として用いた各クヌ-ドセンセルからの分子線をパ-ソナルコンピュ-タ-で制御されたシャッタ-の開閉によって、遂次蒸着した。n=2の相に対して決定した最適基板温度780℃でn≠2の相のその場成長も行ない以下のような結果を得た。 この方法により現在までのところn=1からn=5までの(X線で観測した限り)単相の薄膜が得られた。X線回折パタ-ンは何れも各々のnの値の単相の回折パタ-ンを示しているとともに、c軸配向の回折ピ-クのみが観測され、遂次蒸着法が準安定な構造を作るのにも非常に有効であることがわかった。 抵抗率の温度依存性からn=1,2,3,4,5の各々の試料でT_<c0>が7,65,71,75,30Kとなった。特にn=1の薄膜でMBE法でその場成長で超伝導性の得られたのはこれが初めてであり、転移幅もかなり狭い。作製した薄膜の物性を調べるためn=1〜4の薄膜の反射電子エネルギ-損失分光法の実験を行なった。 また極薄膜化という観点からは、n=2の薄膜2cの厚み(約62A^^°)で(asーgrownで)T_<c0>=38Kで超伝導を示した。上述の程度の薄膜の再現性はほぼ100%であり、今後の技術向上でバルク単結晶を凌駕する薄膜が作れる日も近いと思われる。
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