研究概要 |
我々はBi系超急冷酸化物と,銅基板上の酸化銅を反応させることにより,数分から数十分の極めて短時間で銅基板上にBi系超伝導厚膜を合成するプロセスを開発中である。この方法は融体と基板とを直接接触させ,その場(in situ)で反応させるので,本質的に連続化が可能であり,テ-プ状試料が直接作製できる可能性がある。 本年度は超急冷した膜状試料を基板上にのせ,温度勾配のある炉中を移動させながら反応させ,配向した厚膜の合成の可能性をしらべた。その結果,Bi_2SrCaO_6組成の超急冷膜を銅基板にのせて840°〜860℃の炉中に挿入して反応させれば,5分程度の短時間でも80K相の(OOl)配向膜が得られることが確かめられた。 しかしながら,この方法において,Pbの添加,窒素雰囲気中での焼成,アニ-ルなどを行っても,生成相は80K相または半導体相であり,100K相は生成しないことがわかった。また,試料移動速度が速すぎると反応時間が不足して良好な膜が得られないこと,銅基板の表面は予め酸化しておかなくとも,反応中に表面酸化が起るので反応に必要な酸化銅が供給されることがわかった。 さらに,c軸に配向した結晶相をa軸にもそろえて成長させるためには移動方向の温度勾配ばかりでなく,基板と垂直な方向の温度勾配も制御が必要であることが明らかになった。
|