研究概要 |
YBCOと銀を複合させて90Kの超伝導を維持しながら、室温における比抵抗値が純金属なみに小さく,しかも機械的特性に優れた加工性の高い複合超伝導材料を作製することが本研究の目的である。昨年度までの研究においてYBCO/Agの複合超伝導材料の作製技術を確立し,Agの体積率が50%を越えてもその超伝導遷移温度が88K以上の値を保持し、3点曲げ強度がYBCO単体の約3倍に達する材料を開発した。この構造を走査型電子顕微鏡とX線回折で調べた結果、100μm程度のAg粒子のまわりを細かいYBCO粒子が取り囲み,3次元的な超伝導相のネットワ-クを形成していることを確かめた。Agの存在のため塑性変形するが、最終的にはネットワ-クを形成する脆いYBCO層に沿って破断することがわかった。 本年度はAg/YBCO複合超伝導体の機械的な強度を一層増強することを目標に掲げた。そのためYBCOの強度を強化することが不可欠と判断し、Zrを添加したYBCO材料の超伝導特性と機械的特性を調べた。その結果Zr_<0.5>YBa_2Cu_3O_<7ーδ>組成の超伝導材料において最大曲形強度150MPa,ビッカ-ス硬度1000を記録した。この機械的強度の増大はBaZrO_3が123相の粒界に析出することと,部分溶融による密度の増加が原因であると結論した。こうして得られたZr添加YBCOとAgを複合させることにより,最大曲げ強度280MPaを達成しYBCO単体の7倍以上の強度を得た。これらの成果はJapanese Journal of Applied Physicsに発表した。また,日刊工業新聞の1990年9月4日号に報道された。
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