研究概要 |
酸化物超伝導体を実用線材として使用するには臨界電流Icが大きいことが重要である。ところがIcを正確に決定することは一般的には必ずしも簡単ではない。これはIc決定に用いられる電流ー電圧特性に曲がりがあるためである。Icの決定法はこれまでにいくつか提唱されているが,どれも材料固有の値を与えることはできない。 この問題はJcが一定でなく,IーV特性に曲がりがあることに起因する。我々はこのIーV特性を,信頼性工学で用いられるワイブル関数を用いて解析することを試みた。ワイブル関数は4つのパラメ-タ-を含むが,それらを実験と理論のfittingで決めることができる。解析を行ったのは銀混合Y系焼結試料,Y系C軸配向試料,ドクタ-ブレ-ドBi系試料およびY系エピタキシャル薄膜である。これらの試料につきIーV特性の温度依存在,磁界依存性を測定した。測定に際し10^<ー9>〜10^<ー3>Vの電圧測定が行えるよう様々な工夫をこらした。解析を行った結果,10^6Vにおよぶ電圧の範囲で実験と理論曲線との一致が得られ,4つのパラメ-タ-の物性的な意味も理解できることがわかった。また通常ではIcを決めることが困難なクラックが入った試料や,クリ-プが大きい為に見掛けのJcが非常に小さいような場合にもIcを決めることができる。 各試料についてこれまでに理解できたことは(1)外見上粒界のないエピタキシャル薄膜でもJcの小さな部分が存在すること,(2)Y系C軸配向試料やドクタ-ブレ-ドBi系試料では粒界の接続が良好になっており,Jcは本質的に強いピンニング性質をもっていること,(3)Y系焼結試料は粒界接続が弱くweak link的になっていることである。これらのことが4つのパラメ-タ-に特徴的に現われてくるので,ワイブル関数法は超伝導の材料評価法として有用な方法である。今後更に多くの性質の異なる試料について解析し,ワイブル関数による解析法を確立したい。
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