研究概要 |
[1.精密温度制御式水冷基板ホルダの開発] 高Jc膜の堆積やその堆積機構解明の基礎実験のためには充分な装置安定性と再現性が要求される。しかし、熱プラズマプロセスにおいては、プラズマの基板に与える熱量が膨大なため、精密な温度制御が困難であった。今回新規開発した水冷式回転基板ホルダ-は、基板温度を水冷面と基板間の熱拡散層の厚みを変えることによって約200℃〜800℃まで粗調整でき、水量調節により熱拡散層の厚み650℃の場合で、約60℃の範囲を数℃のオ-ダ-まで微調整可能になった。 [2.パウダ-フィ-ダ-の開発] 原料粉供給の定常性はプラズマの安定性に大きく影響を及ぼす。今回新しく開発したパウダ-フィダ-は、粒径数μの2次粒子凝集性が非常に高い超伝導微粉末を、完全に分散した状態で供給速度60μg/sec〜600μg/secで可変供給可能である。実際にプラズマ中に導入した時の定常性をBa^+の発光強度により評価した場合、20分間で変動は7%以内であることが確認された。 [3.高Jc膜の高速堆積と膜評価] プラズマ形状として、基板温度制御性が良く大面積化が容易な分散型プラズマと反応性が高いビ-ム型プラズマに分けて実験を行なった結果、いずれもc軸配向した鏡面膜が得られ、前者ではY系にて堆積速度0.04μ/min,Tc=92K,Jc=3x10^5A/cm^2(77K,OT)の膜、Bi系で堆積速度0.03μm/min,Tc=75K,Jc=9x10^4A/cm^2(25K,OT)の膜が、後膜では堆積速度>0.5μ/minにてTc=90K,Jc=6x10^4A/cm^2の膜が得られた。後者では前者より膜の全体組成がより原料組成に近づいていた。 [4.プラズマ診断] プラズマ中の気相種の発光分光分析により、Y,Y^+,YO^+,Ba,Ba^+,Cuの存在が認められ、Y^+,Ba^+,Cuの励起温度はそれぞれ2700K,5500K,6700Kである事がわかった。
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