研究概要 |
衛星を用いた観測より陸域における水循環過程を解明することを目的とし,次の研究を行った。 1.裸地面からの蒸発を推定できる土壌モデルを開発し,屋外実験で検証した。植生地での熱収支モデルとして,多層及び1,2層モデルを開発した。積雪の変成過程やアルベ-ドをシミュレ-トするモデルを開発した。アメダス等のデ-タを用いて広域熱収支を評価する手法を開発し春季晴天日の中部日本の熱収支を解析した。 2.昨年度の実験上の難点を克服するため,回転台土壌試料面の外側に幅1.8mの電波吸収材を配置し,また大きな入射角に対しても距離を短く保ちビ-ムが拡がりすぎないようにするなど,マイクロ波散乱計実験システムに改良が加えられた。滑面に対して後方散乱係数の入射角に伴う水分感度の相違などが明らかにされた。 3.レ-ダ-観測によって得られるエコ-強度分布から水蒸気相変化量や3次元風速の3次元分布を推定する手法を開発した。得られた水平風速分布はドップラ-観測によるものに近かった。これによって、将来の衛星塔載レ-ダ-によって全球的に水と熱のフラックスを推定する基礎が築れた。 4.(1)マイクロ波放射伝達のモデル化により,MOSー1に塔載されているMSRによる積雪水量算定アルゴリズムを開発した。(2)降雪粒子の物理特性を明かにし,レ-ダによる降雪観測のためのZーR関係を求めた。(3)GMSの雪雲観測その他から降雪分布を調べた。 5.暖候期の中国大降の広域地表面過程と水循環を比較解析し,(1)砂漠域での熱的低気圧刑成と水蒸気の侵入,(2)梅雨前線隣接域での地面加熱に伴なう積乱雲群の広域頻出を通した地面蒸発・降水サイクルの可能性などの「熱い大陸」の役割を明らかにした。
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