研究概要 |
本研究は、東アジアの気候環境を、気団・雲・降水という観点から総合的に明らかにすることを目的としている。今年度は、昨年度から収集している降水デ-タの追加につとめると共に、ヨ-ロッパ中期予報センタ-作成の風のグリッドデ-タの年数を9年に増加させ、さらに高度・温度等の場を含めて研究を進め、以下の3点を主とする成果をえた。 第1点は、東アジアにおける季節変化がグロ-バルな熱帯の季節変化と密接な関係にあることを昨年度にひき続きさらに明確化したことである。オ-ストラリアの冬のモンス-ンの開始が東アジアの冬の開始より約1ヶ月遅れること,北アメリカでは東アジアのように熱帯との関係が明確でない,という点が興味深い点である。 第2点は、冬季の北半球中高緯度地方における寒気の蓄積・南下過程を明らかにしたことである。この結果、北緯65度付近にある寒気の中心(850mb面)付近の気温の低下に一つの冬の中で平均的に3〜4回程度の周期的変化がみられ、その時期が、北米大陸とユ-ラシア大陸との間で1〜2半旬ずれることが認められた。また、気温・高度物の分布から、冬という季節の区分を大規模場で行うことができることが示された。 第3点は、初夏から盛夏季にかけての東アジアにおける前線帯の季節変化のプロセスを、地表面状態・降水様式の変化を含めて明かにしたことである。この点は1年分だけの結果であるが、寒帯前線帯と梅雨前線帯の北上による季節変化様式のちがいが明らかにされた。 このように今年度は、個別的な季節における気候環境の解明が進んだが、一年を通した全体像と降水分布の変化との関連については、次年度に行う予定となった。
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