研究概要 |
1.成層圏オゾンの北半球低緯度に於ける春季の分布に特徴を見い出した。すなわち、太平洋上で全オゾン量は少なく、経度90゚に極めてオゾン濃度の高い地域のある事を確認した。この事は、過去に報告されているD^^utchの1966年4月モデルを再検討してみるとこれにも現われており、又、本研究で解析したデ-タと同日のTOMSのデ-タとも一致する事を確認した。従って、この季節に、この地域に特有の一般的な現象であると考える。しかし、何故、この様な特徴が現れるのか不明であった。友研究で用いたLASのデ-タは、高精度のオゾン高度分布を与えるので、解析した結果、(1)上記の全オゾン分布の特徴と良い相関が見られるが、40kmの分布が最も良く、次に30km,20kmという順である、(2)経度90゚のオゾン濃度の高い地域の両側の地域では、逆にオゾン濃度が極小になる事が分かった。これを踏まえ、検討を進め、上記(1)の結果は、HOxやNOx,ClOxといった微量成分によるオゾン破壊速度の高度分布と極めて良い傾向にある事が分かった。従って、これらの微量成分の親分子の成層圏に注入される速度に分布が生じ、この様な結果になる事が分かった。経度90゚付近で、この季節に強い季節風が吹く事が良く知られているが、この季節風とHOx等の微量成分の親分子である水蒸気等の上昇する気流との間で相互作用があり、その結果、分布が生じるのであろうと考えられる。この相互作用は、スリップストリ-ム効果によって(2)の様な分布になる事を予測する。太平洋上からはより多くの水蒸気が蒸発するであろうから、オゾン濃度は小さくなる。 2.オゾン等の組成分子種の絶対吸収強度の算出には、高精度の分子分生学的パラメ-タを定めなくてはならない。本研究では、このためのプログラム及びデ-タベ-ス開発、改良を進めた。
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