研究概要 |
チトクロ-ム類のモデル化合物である低スピン鉄(III)ーポルフィリン錯体における軸配位子イミダゾ-ルの内部回転を束縛し、イミダゾ-ルがポルフィリン環に対して固定されているような錯体を分子設計するため、メソ-テトラキス(2,4,6ートリアルキフェニル)ポルフィリナト鉄(III)錯体を合成した。この錯体に種々のイミダゾ-ル系配位子を結合させ、それらの ^1Hおよび ^<13>CーNMRを測定した結果、以下のことが判明した。 1.立体障害の大きな2ー置換イミダゾ-ルを軸配位子として持つビス(2ー置換イミダゾ-ル)錯体ではイミダゾ-ル環の回転が低温でNMR的に束縛され、二つのイミダゾ-ル環が互いに直交に近い配座に固定された。また、イミダゾ-ル環の内部回転の活性化自由エネルギ-は25℃で11.3〜12.9kcal/molの範囲にありアルキル基がMe,Et, ^iPrと変化するにつれて増加する傾向にあった。 2.2位に置換基を持たないイミダゾ-ル錯体では、とのようなポルフィリンを用いてもイミダゾ-ル環の内部回転を止めることはできなかった。回転の活性化自由エネルギ-は8.8kcal/mol以下と予想された。 3.ビス(2ー置換イミダゾ-ル)錯体の軸配位子の一つを立体障害の小さな配位子、例えば1ーメチルイミダゾ-ルやシアン化物イオン、で置換すると2ー置換イミダゾ-ル環の回転障壁が著しく低下(3kcal/mol以上)した。従って、この種の混合配位子錯体における配位子の固定は困難なことが判明した。 4.ポルフィリン環のメソ-位に ^<13>Cを導入した錯体を用いた研究から、極めて立体障害の大きな2ーメチルベンゾイミダゾ-ルを軸配位子に持つ錯体では、2つのイミダゾ-ル環が互いに平行に近い配座に固定されていることを示唆する結果を得た。これについては今後さらに検討する予定である。
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