研究概要 |
近年、オプトエレクトロニクスの分野で有機非線形光学材料の開発が急がれている。非線形光学材料はレ-ザ-光に対して第2次高調波発振(SHG)あるいは3次以上の応答を示すので素子としての応用が期待される。我々は2個以上の発色団を分子内にもつ光学活性励起子相互作用系の非線形効果を研究する目的で、光学活性パイ電子系スピロ化合物の分子設計、合成、光学分割、CDスペクトルによる絶対立体化学の決定を行ってきた。本研究ではさらに発展させて次の研究を行った。 1.[6,6]ーvespireneは側鎖を架橋することによって光学活性となる特異な化合物である。我々は、その絶対立体化学を関連化合物にCD励起子カイラリティ-法を適用することによって非経験的に決定してきたが、今回[6,6]ーvespirol bis(p__ーーbromobenzoate)のX線結晶解析を行い、発色団間のねじれ角を決定するとともに、絶対配置を決定した。得られた結果はCDスペクトル法によって決定したものと一致している。メチレン側鎖の部分にdisorderがあり、現在さらに解析を進めている。 2.我々はchiral building blockとして対称性が良く、分子が小さく、bifunctionalな系として光学活性2,2′ーdimethylspiro[3.3]heptaneー2.2′ーdicarboxylic acidを分子設計および合成し、CDスペクトルによる絶対立体化学の決定を行ってきた。今回、我々はsultamとのアミド体のX線結晶解析を行い、絶対配置を硫黄の異常分散効果およびsultamの絶対配置から決定した。この結果はCDスペクトル法による結論と一致した。 3.我々はいくつかの光学活性bis(p__ーーdimethylaminobenzoate)化合物がSHG効果を示すことを見出した。これを指針に現在、発色団の選択と導入を検討している。
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