研究概要 |
高分子の構造,電子状態,物性・機態(導電性など)の間には密接な関係がある。この関係を高い精度で解明できれば分子設計・材料設計および高分子科学に大きな発展が見られることは明らかである。このような考え方を基礎いして,高分子の導電性発現の理解及び予測する方法を開発し分子設計への基盤を確立することを本研究課題の目的としている。 本研究課題を進めるいあたり,ポリピロ-ルを研究対象とした。この高分子の導電性発現の機構は,ポリアセチレンのようなソリトンの生成によるものでなくポ-ラロン,バイポ-ラロンの生成によるものと考えられている。本研究で調製したポリピロ-ルの構造を固体を固体高分解能NMRで精度高く決定し,その構造に基いた電子状態をNMRしゃへい定数及びtightーbinding MO,FPTなどを用いて評価する。 ^<15>Nをラベルしたポリピロ-ルフィルを電解重合法で調製した。この際,未ド-プ及びド-プ試料を調製し,電気伝導度を測定した。 ^<15>NNMRスペクトルの解析から,NMRしゃへい定数が大きな範囲で分布した4本のシグナルの存有が確認された。低磁場側の2本のシグナルはキノイド構造に由来することが量子化学計算の助けで帰属できることが明らかとなった。また,ド-パントの量の増加とともにこれらの2本のシグナル強度が増加することがわかった。また,電気伝導度が大きくなり,これらのピ-クの強度と密接な関係があることが明らかとなった。また,tightbindingMO計算からキノイド型ポリピロ-ルのバンドギャップが芳香族型ポリピロ-ルのものより著るしく小さいことがわかった。本研究において開発された方法論が高分子の導電性発現の解明及び分子設計に大きく寄与することが明らかとなった。
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