研究概要 |
電子供与体の骨格へ電子受容性の複素環を縮合すると、電子供与性の面ではマイナスとなるが、分極が大きくなること、ヘテロ電子接触により分子関相互作用が強まることなどから新物性の発現が期待できる。本研究では、1,2,5ーチアジアゾ-ルが縮合した新規な電子供与体の合成を行い、Xー線構造解析によりヘテロ原子間の相互作用を明らかにするとともに、電荷移動錯体を含めた物性を検討した。 ジメチルジヒドロピラジンは、8π電子系であるために不安定であり単離できないが、チアジアゾ-ルを縮合させることで安定に単離することに成功した。この化合物は、12π電子系のために電子供与性が高く,一部の電子受容体と高導電性の錯体を形成した。また、Xー線結晶解析より、S…Nの相互作用と水素結合で平面シ-トを形成していることが判明した。 ビスチアジアゾロテトラチアフルバレン(TTF)は、新規に合成したチオンとトリフエニルホスフィンの反応で得られた。この化合物は、S…N,S…Sに短い原子間接触が見られ、分子間相互作用が強い分子であることが明らかとなった。 強力な電子供与体であるpーキノビス(1,3ージチオ-ル)の骨格にチアジアゾ-ル環が縮合した化合物は、WittigーHormer反応を利用して合成でき、特異な物性を示した。すなわち、高触点で昇華性があり、単一成分で10^<ー3>Scm^<ー1>の電導性を示した。Xー線結晶構造解析から、この化合物は短いS…S接触(3、26A^^°)によりシ-ト状のネットワ-クを形成し、このシ-トが積層していることが分かった。単一成分での高電導性は、ヘテロ原子接触に基づく強い分子間相互作用に起因すると考えられる。 上記の合成実験を行った時に、分離手段として中圧分取液体クロマトグラフを、構造解析ならびに分子軌道計算にデ-タ解析用システムを用いた。
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