研究概要 |
ドナ-・アクセプタ-としての適当な分子ペアの基底状態および励起状態における選択的電子移動を経る複合体形成を利用し,新しい高選択的な官能基変換,合成反応を開発し,これを医薬・農薬などとして有用な天然有機化合物などの合成に応用し,現代有機化学への貢献と創薬のための基礎研究に寄与することを目的になされた本研究の成果の中,マクロリド・ポリエ-テルの合成につき報告する。 I.セコ酸のコンホメ-ション制御によるエリスロノリドAなどの合成エリスロノリドAセコ酸の保護基の違いによるコンホメ-ション変化をNMR解析とMMP2計算により明らかにし,マクロラクトン化に最も適したセコ酸誘導体を予測,合成した。これは超効率で閉環し(室温数分,定量的),対応する14員環ラクトンがえられ,常法によりエリスロノリドAに誘導された。この方法は,オレアンドノリド,ランカノリド合成にも応用され,現在フラグメントの合成が進行中であり,エリスロノリドAと同様の結果が期待される。 II.マクロリングのコンホメ-ション制御によるマリドノリド類の合成・カルボノリドBの各種誘導体につきNMR解析とMMP2計算によりマクロリングのコンホメ-ションを予想し,制御し,選択的還元,エポキシ化の組合せにより,カルボノリド類,ロイコノリド類,マリドノリド類の完全立体選択的合成に成功した。 III.新テトラヒドロフラン形成反応によるイソラサロシドAなどの合成熱力学的条件下のキレ-ション制御反応により,置換テトラヒドロフランの立体選択的合成法を確立し,これを鍵反応として,ラサロシドケトン,イソラサロシドケトンを合成し,アルデヒドとのアルド-ル反応により,ラサロシドA,イソラサロシドAの合成に成功した。
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