研究概要 |
我々は昨年度の研究において、メソ型1,3,5ートリオ-ル誘導体のlーメントンとのアセタ-ル化反応がProーR酸素と3位の酵素の間でエナンチオ選択的に進行し、3連続不斉中心を持つキラルシントンが極めて簡便に合成できることを見いだした。本反応における不斉識所の要因解明を目的として、メソ型トリオ-ル誘導体と同等の部分構造を持つ1,3ーアルカンジオ-ル誘導体(ラセミ体)とdlーメントンとの反応を検討した。 いずれの反応においても、メソ型トリオ-ルの反応で選択的に生成したスピロアセタ-ルと類似の構造のジオキサン環状の置換基がアセタ-ルのアキシアル酸素の近傍に位置するジアステレオ異性体Aがエカトリアル酸素の近傍に位置する異性体Bに対して選択的に生成することがわかった。また、選択性は原料ジオ-ル誘導体の置換基がかさ高くなるにしたがって向上する傾向を示した。さらに、異性化実験の結果より、本反応は熱力学支配の反応であり、両異性体の安定性の差が反応の立体選択性に反映していることが明らかとなった。 アセタ-ルAでは置換基の一部がメントン環部分とvan der Waals安定化相互作用に有利な距離に位置しており、この相互作用が安定化の要因と考えられる。アセタ-ル化反応における選択性が置換基がよりかさ高くなるにしたがって向上する結果もvan der Waals相互作用が関与する原子数の増加に比例して増大することから合理的に説明できる。分子内van der Waals安定化相互作用の効果はMM2法による分子力場計算の結果からも支持された。さらに、計算結果を詳細に検討したところ、両アセタ-ルの立体エネルギ-差の大部分はvan der Waalsエネルギ-の差、とりわけ1,3ージオキサン環上の置換基とメントン環部分の間のvan der Waals エネルギ-の差に起因していることが明かとなった。
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