研究概要 |
遷移金属による酸化反応において、効率的な複合電子伝達系触媒を開発することで有用な酸化系が構築された。 パラジウムの酸化遷元プロセスを機能的に行なわせるためパラジウムーオルトキノン触媒系を用いてワッカ-反応の効率化を図ったところ、酸化脱水素酵素の補酵素であるPQQのトリメチルエステル(PQQTME)がキノンとして有効であった。UVーVIS,CV測定でPQQTMEの配位子としてのレドックス過程が確認され,パラジウム触媒は酸素雰囲気下、効率的な触媒サイクルを形成していることが明らかとなった。分子軌道計算による考察も行なった。PQQTMEが配位するとともに、酸素雰囲気下、可逆的なレドックス系を形成することで効果的な酸化システムが構築でき、有用な合成化学的手法を提供した。 Pー450モデル反応であるMnTPPClによるオレフィンのエポキシ化反応において過酸化水素を酸化剤として用いた場合、系中にオルトキノンを共存させると反応の加速および生成物であるエポキシドの収率に向上が見られた。オルトキノンがメディエ-タ-として酸化反応に関与していると考えられUVーVISによる考察より過酸化水素がオルトキノンと付加体を形成していると推測される。 一電子移動に基づく酸化反応を合成化学的に有用なものとするため、オキソバナジウム化合物による酸化反応でカルボニル化合物の酸化的変換法や酸化的炭素ー炭素結合開裂法を明らかにしている。後者では、複素環系多座配位子を導入し、触媒反応の効率化を実現した。Mn(oAc)_2触媒による酸素酸化反応では、酸化還元に基づくアルコ-ルが選択的に得られ、遷移金属の差異により反応様式を多様化できた。酸化剤としてヨ-ドソベンゼンを用いるとエポキシドへ変換されることが判明した。 以上、遷移金属の効率的なレドックスに基づく酸化系が構築された。
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