研究概要 |
希土類金属反応剤の開発を目指して本年度も研究を行いイッテルビウム金属(Yb)によるα,βー不飽和カルボニル化合物の立体選択的環化二量化反応およびイミン類の極性変換を経るαーアミノ酸の合成反応等の新合成反応の開発に成功した。 1.α,βー不飽和カルボニル化合物の立体選択的環化二量化反応 カルコンなどの不飽和ケトンとイッテルビウム金属(Yb)をTHF/HMPA中で反応させるとYbから一電子移動が起こり,ラジカルエノラ-トが生成し,これがさらに一分子のケトンと環化付加反応を起こしてシクロペンタノ-ル誘導体を与えることを見い出した。生成物の立体構造はX線構造解析によって明らかにされ,ヒドロキシル基とアシル基がcis位にあるものが主生成物として選択的に得られることが明らかになった。これはYbの強い環元力と親酸素性によって,安定なチェア-型の遷移状態を経て反応が進行することにより説明される。また,本環化二量化反応はLnCl_3/Zn系でも起こり,特にYbCl_3/Zn,EuCl_3/Zn,SmCl_3/Zn系が高収率・高選択性を与えることも明らかになった。 2.イミンとCO_2よりαーアミノ酸の合成 ジフェニルメチレンアニリンのようなアリ-ルイミンはYb金属とTHF/HMPA中でケトンの場合と同様に反応して,3員環アザメタラサイクル中間体を生成する。この中間体は出発イミンがケチミンの場合は環元生成物の相当するアミンを,またアルジミンの場合は二量化生成物の1,2ージアミノエタンを選択的に与える。さらに,この中間体にCO_2を常温で反応させると,極性変換されたイミンの炭素原子を攻撃してアミノ酸のYb塩が高収率で得られることが明らかになった。このYb塩を希塩酸で処理するとαーアミノ酸が得られるので,イミンとCO_2から直接αーアミノ酸の合成が可能となり,アミノ酸の新しい合成法として有用である。
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