研究概要 |
本研究は,1)新しい酸塩基複合試剤を用いる合成反応の開発,2)ポリケチド化合物を用いる合成反応,に関するものである。前者については,アミンーリチウム塩複合系を用いる活性メチレン化合物のマイケル付加反応,電解条件下でチオエステルの活性化法を開発した。また,後者に関しては,2,3の生物活性化合物の合成を行った。 マロン酸エステル等の活性メチレン化合物の不飽和ケトン,アルデヒドへのマイケル付加反応は,有用な炭素ー炭素結合生成反応である。アミンを塩基として用いることができれば,新しい有用な方法になると考えて検討を行ったところ,反応系内にリチウム塩を共存させた複合系では,室温で容易に反応が進行することが分かった。リチウム塩が存在しないとこの反応は全く進行しない。この複合系の特徴の一つは,触媒系の組合せやモル比を変えることで,反応性の低い基質から高い基質まで幅広く適用できることにある。なお,マロン酸ジメチルを不飽後アルデヒドに作用させたところ,良好な収率で1,4ー付加物を与えることも分かった チオエステルを活性化しアルコ-ルと反応させてエステルを合成する方法は有用な手法であり,従来,Hg,Cu,Ag等の重金属塩が活性化剤として利用されてきた。しかし,これらは有毒であったり,吸湿性であるなどの不便さがあり,また,基質に対して当量以上必要であった。ところで我々は,電気化学的な活性化を行うと,重金族塩の活性化剤を用いずに,触媒的にこのエステル化反応が進行することを見いだした。 ポリケチド化合物の化学的挙動に関する研究成果をもとに,生物活性化合物の合成を行った。抗菌性を有する<(+)>___ーーsemiーvioxanthin,<(+)>___ーーnanaomycin A,および抗腫 性抗生物質(-)ーurdamycinone Bの全合成を完成した。
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