金属ー半導体界面の問題は従来、金属と半導体界面での直接的な固相反応に多くの興味が持たれてきた。その結果金属の形状あるいは内部構造に起因する、金属自体の構造および物性の変化に対しては余り重要視されていなかった。本研究では金属ー半導体界面反応を特に金属薄膜の性質に注目して実験的に解明しようと試みた。 a)金属膜構造の変化:金属ー半導体界面の安定性を調べるのに加熱実験を行うのが普通である。温度の上昇と共に界面反応が促進されるが、同時に金属膜自体にも変化が起きる。1つは半導体元素の金属中への固溶であり、もう1つは金属膜の形状変化および構造変化である。室温で岩塩上に真空蒸着した後岩塩を取り除したAu薄膜とGaAs上のAu膜の挙動を比較した。その結果200℃と300℃の間の顕著な結晶粒の成長は両者とも同じであるが、300℃以上になるとAu中へのGaの拡散によりAu膜自体の性質が変化し、非常に表面拡散しやすくなっていることが解かった。 b)電子照射損傷:1MeV程度の高エネルギ-を持つ電子による照射損傷で、Frenkel欠陥が作られる。それらが動ける場合、点欠陥集合体を形成する。これらの点欠陥集合体の形成の様子、例えば形成される温度および成長速度などは、膜中の既存の欠陥の影響および不純物原子の影響を非常に受ける。従って点欠陥集合体の生成を調べることにより膜と半導体基板の性質を知ることができる。この方法を用いてSiおよびGaAs基板上のAlおよびAu膜の界面反応の初期過程を調べた。焼鈍による界面反応の進行に従い、点欠陥集合体形成に大きな変化があらわれ、この方法は今後金属/半導体界面のように異種物質間の反応を検出する新しい方法として使用できることが判明した。
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