研究概要 |
1)サルを用いたエイズモデル作出の成功 5頭のアカゲザルにSIV_<mac>251を接種後,41〜48週後に2頭にエイズ症状が観察され殺処分に付した。2頭のサルには,S.aureus(肺),CMV(脾、肺)の増悪が認められ,著しい体重の減少が生じた。また末梢CD4細胞の減少,マイドジェン応答能等の免疫学的機能が低下した。残り3頭は、感染はしたが現在のところ発症していない。 2)T細胞サブセットによる感染発症過程の解析 5頭のサルすべてについて,感染後しばらくはCD4細胞の減少が見られたが,後回復現象が起きた。発症個体では,しかし顕著な回復がないか,あるいは回復後再度急激な減少が生じた。新しく作出したU6単クロ-ン抗体は,正常CD4細胞のほとんどすべてに発現されているが、SIV感染によってCD4細胞上から消失することが判明した。特に発症直前の個体のCD4細胞上には,U6抗原はほとんど認められなかった。U6抗原はヒトにも存在するので,エイズ感染・発症の新しい指標となる可能性もある。又U6抗体でサルCD4細胞を処理するとSIVの感染は著るしく阻害された。以上から,U6抗原はエイズ感染機構解明の新な視点を提供したと考える。 3)アフリカミドリザルのCD4細胞の特微 SIVの自然感染が知られているアフリカミドリザルのCD4細胞の特微について調べた。その結果、ほとんどすべての末梢CD4細胞は同時にCD8抗原を発現している事が判明した。末梢中のCD4^+CD8^+細胞は,ConAとILー2添加培地で培養すると,ほとんどCD4抗原を失ったCD8単独陽性細胞になる事も判明した。現在このような細胞にSIV_<AGM>を感染させる実験を行っている。自然界におけるSIVとの共存のために、アフリカが獲得した戦略が,この活性化リンパ球からCD4抗原を消失させることの可能性も十分考えられる。
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